
こんにちは!
「機械系の俺がIT業界に転生してみた件」、ブログ主の瑠璃坊主です。
これまで、クラウドの土台となる「ストレージ」「仮想サーバー」「ネットワーク」「データベース」といったシステムの「骨格」を学んできました。これらの部品が揃って初めて、システムは正常に稼働します。
前回の記事はこちら↓
【システムの心臓部!】データベースって何?クラウドのマネージドサービスが超便利な理由
今回から学ぶのは、その骨格の上でビジネスを飛躍的に加速させるための、非常に重要な分野です。それが、「データ分析」サービスです。
プラントエンジニア時代、僕たちも機器の「データ」を分析して故障の予兆を察知したり、効率を改善したりしていましたよね。IT業界では、扱うデータの量と複雑さが桁違いになり、そのデータから「次のビジネスの打ち手」を見つけ出すことが、企業の競争力に直結しています。
今回は、データ分析の鍵となるビッグデータの概念と、それを扱うためのクラウドサービスについて、一緒に勉強していきましょう!
1. ビッグデータって何?なぜ重要?
ビッグデータという言葉はよく聞きますが、一体何を指すのでしょうか?
一言で言うと「従来の一般的なソフトウェアや技術では、収集・保存・処理・分析が困難なほど巨大で複雑なデータの集まり」のことです。
「ビッグ」の定義は明確な基準があるわけではありませんが、その特徴は、単に「量が多い」というだけでなく、以下の「3つのV」で表現されることが多いです。
| 特徴 | 日本語訳 | 説明 |
| Volume (量) | 膨大なデータ量 | テラバイト(TB)やペタバイト(PB)といった、非常に大きなデータ量。 |
| Velocity (速度) | リアルタイム性 | SNSの投稿やセンサーデータなど、絶えず発生し続ける高速なデータ。 |
| Variety (多様性) | 形式の多様さ | 整理された表形式のデータだけでなく、画像、動画、音声、テキストなど、様々な形式が混在しているデータ。 |
ビッグデータがもたらす「知見(インサイト)」
ビッグデータが重要なのは、その巨大なデータそのものではなく、そのデータから導き出される「知見(インサイト)」や「洞察」です。
- 例1(行動予測):「Aという商品を購入した顧客の80%が、その後1週間以内にBという商品も購入している」
- 例2(マーケティング効果):「朝7時台に特定のSNSに広告を出した顧客層が、最も購入率が高い」
これらの知見は、経験や勘ではなく、明確なデータに基づいており、レコメンデーション機能(あなたへのおすすめ)や、在庫戦略、広告戦略など、ビジネスの意思決定に直結する重要な情報となるのです。
2. ビッグデータ分析を支えるクラウドサービス

ビッグデータを扱うには、通常のデータベースやサーバーでは処理能力が追いつきません。そこで、クラウドサービスには、この巨大なデータを効率的に処理・分析するための専用サービスが用意されています。
ここでは、AWSを例に、データの流れに沿って3つの主要なサービスを見ていきましょう。
① データウェアハウスサービス:データの「専用巨大倉庫」
まず、分析のために膨大なデータを一箇所に集める必要があります。その役割を担うのがデータウェアハウスです。
データウェアハウス{企業の複数のシステムからデータを集約し、分析や意思決定のために最適化されたデータの専用の倉庫のこと}は、日々の取引を記録する一般的なデータベースとは異なり、高速な分析処理に特化して設計されています。
- AWSのAmazon Redshift:テラバイト級、ペタバイト級の巨大なデータを保存し、数十秒といった短時間で複雑な分析クエリ(データを取り出す命令)を実行できるデータウェアハウスサービスです。
- 用途:過去数年間のすべての購買履歴データを保存し、顧客ごとの傾向分析や、商品の売れ行きの傾向分析などに使われます。
イメージとしては、様々な工場から送られてくる大量の製品(データ)を、「分析しやすいように整理整頓された巨大な倉庫」にしまうようなものです。
② ビッグデータを高速処理するサービス:分散処理のプロ
データウェアハウスにデータが集まったら、いよいよ分析処理を行います。特にVelocity(速度)やVariety(多様性)を持つビッグデータを分析するには、複数のコンピューターに処理を分担させる必要があります。
- AWSのAmazon EMR:Apache SparkやApache Hadoop{どちらもビッグデータを高速に処理するためのオープンソースの分散処理するための土台となるもの}といった、巨大なデータを複数のコンピューターで分散処理するためのオープンソース{ソースコードを公開し、誰でも自由に利用、改変、再配布できる開発モデルや、ソフトウェア}の技術を、手軽に使えるようにしたマネージドサービスです。
Amazon EMRは、「多数の作業員が協力して同時に巨大なパズルを解く」ように、膨大なデータを分割して並列で処理することで、短時間で複雑な計算や分析を可能にします。
- 用途:「この商品を見た人は、こちらもチェックしています」というレコメンデーションエンジン{ユーザーの行動データ(購入履歴、閲覧履歴など)や嗜好を分析し、そのユーザーが興味を持ちそうな商品やコンテンツを自動的に提案するシステム}の裏側で、大量のユーザー行動履歴を分析し、リアルタイムに近い速度で関連性の高い商品を見つけ出す、といった処理に使われています。

③ データを見える化するBIツール:分析結果を「経営の言葉」へ
どれだけ高度な分析をしても、その結果が専門的な数字の羅列では、ビジネスの意思決定に活かすことはできません。分析結果を「誰でも理解できる形」に可視化(見える化)することが、データ分析の最後の、そして最も重要なステップです。
その役割を担うのが、BI(Business Intelligence)ツールです。
- AWSのAmazon QuickSight:BIツールの一種で、Redshiftなどで分析された結果を、グラフ、チャート、ダッシュボードといった視覚的に分かりやすい形で表示してくれるサービスです。
Amazon QuickSightを使えば、たとえば「今月の売上が目標に対してどうか」「どの地域の顧客が最も離脱率が高いか」といった情報を、一目で把握できるレポートとして自動で作成できます。これにより、経営層やマーケティング担当者が、データに基づいた迅速な意思決定を行えるようになるのです。
まとめ
今回は、IT業界の未来を担うデータ分析サービスについて学びました。
- ビッグデータは、量、速度、多様性を持つ巨大なデータの集まりであり、そこから得られる「知見」がビジネス競争力を生み出します。
- クラウドには、ビッグデータを扱うための専門サービスが用意されています。
- データウェアハウス(Redshiftなど):分析のためにデータを集約する専用倉庫。
- 高速分散処理サービス(EMRなど):巨大なデータを効率よく高速に処理。
- BIツール(QuickSightなど):分析結果をグラフなどで可視化し、意思決定を支援。
これらのデータ分析のスキルは、今後IT業界で働く上で、エンジニアのキャリアを大きく左右する最重要スキルの一つです。
次の記事では、ITと現実世界を結びつける技術、IoT(Internet of Things)についてまとめていきます。
それでは次回までご安全に!


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